去る12月13日、浅草公会堂にて「第28回 浅草ジャズコンテスト」が行なわれました。前回に続き、もちろん今回も馳せ参じましたよ。期待いっぱいで。
http://www.tctv.ne.jp/geibun/
前回は〈ヴォーカル部門〉〈ソロ・プレイヤー部門〉〈バンド部門〉となっていた(気がする)のですが、今回は〈ヴォーカル部門〉〈バンド部門〉のみ、そして各部門10組ずつという構成でありました。
まずは〈ヴォーカル部門〉について。固定のピアノ・トリオがバックを務め、入れ替わり立ち代わりヴォーカリストが登場するという形式。折り目正しいスタイルの方が多いように思いました。
そして、発表が終わると審査員の方々からのコメント・タイム。そのコメントですが……前回僕が拝聴したような辛口のものは(この時点では)ありませんでした。出演者の方々が、素人目に見ても非常に優れたパフォーマンスをなさっていたこともあると思います。とはいえ、時折「歌は雰囲気だけじゃ歌えないんです」といった本質的な指摘や、蕨のローカル・トークで延々と引っ張っていくなど、目を見張る部分があったことは特記しておきます。
そしてゲストのパフォーマンスを挟み、〈バンド部門〉へ。今回はデュオからコンボ、ビッグバンドとさまざまな編成のバンド10組が登場します。特に中学生、高校生のグループが4組とフレッシュでしたね。
それでは……以下コメントを抜粋してご紹介します。今回も必死にメモを取っていましたので、傍目には熱心なジャズ・リスナーのように見えたはずです。
まずは“I Remember Clifford”を演奏したビッグバンドへのお言葉。
「僕はいつも文句ばかり言っているけど、文句ないなあ」(ここで司会者曰く「珍しいですね」)「管楽器も良い音だし、リズムもしっかりしているし。ただ、クラーク・テリーが演奏したこの曲は聴いた?」(「聴いていません」、という演奏者の返答に)「やっぱりねえ。それは聴かないと」
……確かこれだけだったような? なぜそれを聴くべきなのかにも言及してほしかったです。
引き続き同じグループへのコメント。
「僕はこの曲をやらないことにしています。この曲は、クリフォード・ブラウンという凄いプレイヤーが亡くなって、ベニー・ゴルソン(?)がそれを悲しんで作った曲なんです。だから僕はこれを演奏すると悲しくなってしまう……こういう由来って知ってる?」
演奏者「はい、知ってます」
「あ……そうなんだ。ああ、だから演奏が悲しく聴こえたのかな?」
演者の返答は想定外だったのかもしれませんが、それでも最後の切り返しはさすがだと思いました。
あと、このあたりでオーディエンスの新生児の方が泣き出してしまって、ステージに立ったバンドにも観客にも「え、これ始めていいのかな……」みたいな空気が漂っていました。長時間のイベントなので、新生児の方は大変ですよね。
また、別のバンドには
「……(5秒ほど沈黙)困りましたね」
前回に続き、まったく同じ決まり手(?)も出ました。
「みんな目線が下を向いているよ。こういう大きい会場なら、3階席のいちばん後ろを見るくらいじゃないと」
これは普通に素晴らしい(?)コメントです。その後「アメリカの超一流の人は、みんなよく見ているよ」というやや抽象的なフォローもありました。
また、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリ的な編成で有名曲“Waltz For Debby”をやったデュオには、話の流れとはいえ「デュオでやる必然性を感じない」と……! 僕も最初は「なんでこの曲なのかな?」と思いましたが、エモーショナルな演奏に引き込まれました(なお、このデュオは銀賞を獲得。おめでとうございます!)
ちなみに、今回は福岡や京都、大阪などから多数の方がご参加なさっていて、司会の方も事あるごとに「地元でも〈浅草ジャズコンテスト〉の名は鳴り響いているんでしょうか?」と振っていましたが、みなさん「いえ、別に……」「知らなかったんですけどネットで見て」みたいな直球の返答だったのも印象深いです。
あと、前後の流れがまったく思い出せないのですが、
「(ステージ上で)舞い上がっていてかわいそう……あ、こういう言い方は良くないですけど!」というハードな一発が僕のメモにありました。
これも文脈が不明ですが「(このバンドは)普段いっしょにやっていないように見えた。もっと一体感がほしい」というご意見も。なかなかシビアですが、真摯な発言だと感じました。
「ベースの人の音が聞こえないんだよね」
それはPA的なことでは……?
「管楽器はもっとテーマ(のフレーズ)を大切にしてほしい。(僕の)バークリー音楽院の師匠が言っていたんだけど、メロディーをロング・トーンで吹くようにすれば、自信(?)が出てくる。ギターもピアノもそれをやっていないでしょ? だからイモなんだよ……あっ!!(言い過ぎた!!)」
イモって。
「サウンズ・グッドですね」
とある高校生バンドへのコメントの第一声。非常にキャッチーなフレーズで、今後の原稿執筆で使いたい……!
お次は、有名私立大学のビッグバンドへ。
「名門なんだから、もうコンテストに出て賞を目指さなくてもいいんじゃない?」
あくまでも冗談半分でしたが、メモを見て驚いたので書いておきました。
「メンバーも入れ替わっていくと思うけど、(活動の軸をしっかりと持って)早稲田はこうだという伝統を作ってください(大意)」みたいなご意見もあり、伝統とは何かを考えさせられました。漠然と、ジャズは〈時代と共に変化してきた〉伝統を持つ音楽だと捉えていましたが、変わらないこともまた伝統なわけで。
そして、今回のベスト・コメントはこれです。
「いまのアメリカにジャズはありません」
!!!!!!!!!!!
審査委員長のお言葉で会場が震撼しました。あまりの衝撃に、これを聞いてから一睡もできていません(嘘)。これは高校生バンドへのコメントで、続きがあります。
「(アメリカのバンドは)みんな頭でっかちになっている。バンド自体はたくさんいるし、みんな良いプレイをしている。でも、そこにジャズの精神はありません。(顧問の)先生、ジャズの精神をこの子たちに注入してあげてください。かつて、デューク・エリントンは〈音楽はひとつだ〉と言いましたが、いまはふたつあります。それは〈良い音楽〉と〈悪い音楽〉。ジャズとクラシックは精神が違って、譜面にない部分をやるのがジャズなんです。あなたたちは、高校生としては最高の演奏をしていますが、だからこそ譜面にないものをやってほしい。それが胸に響く音楽なんです。ジャズとは本来そういうもの。技術的な上手さだけではだめなんです」
以上、速記状態でメモしたので、あくまでも大意です(デューク・エリントンのくだりは少し曖昧です、すみません)。文句のつけようがない、熱いお言葉です。
なお、僕は以前どこかで「音楽に良し悪しなんてない。ただつまらなく聴くリスナーがいるだけだ」という有名ミュージシャン(失念)の発言も目にしましたが、まぁここで書くのは野暮ですね(でも書いた)。
そして最後、審査委員長による総評にも触れておきます。
「何度も言いましたが、(演奏する人は)ステージを意識してください。音楽に定義はありません。ジャズは自由な音楽です……でも、そこには対象があるのです。それはオーディエンス。誰かに聞かせて、初めて音楽になるのです。これは僕の考えですが、スタジオでの練習は音楽ではない。人に聞かせてこそ音楽なのです。そしてステージは、お客さんのために出すもの。それを肝に銘じてください」
これも速記状態の大意です。このコンテストの核となる部分であり、すべてのミュージシャンに求められる本質に関わるお話でした。
……とはいえ、気になる部分もあったり、なかったり。
以上、長文になりましたが、おつきあいくださった方はありがとうございました。前回は汎モダン・ジャズ的なバンドばかりだと感じましたが、今回は一組、ヒップホップやクラブ・ミュージックを通過したであろうバンドが出場しており、実にカッコよかったです。審査員の方々からも好評でしたし、こういうバンドもたくさん出てほしいですね。
次は2009年12月12日に開催予定とのこと。僕はもう予定を空けておきますよ。
12/15追記:
生き生きとした素晴らしい演奏を聴かせてくれた演奏者の方、運営をしてくださったスタッフさん、同じ空間を共有したお客さんたち、そして今回もまた金言を授けてくださった審査員の皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。また会いましょう!見てないだろうけど!
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